── そして春 ──
えっと………これで大丈夫、多分。
[雪は姿を消し、温かい空気が街に吹き抜ける頃、桜色の髪を高く一つに結んだ女は纏まった荷物の前で満足そうに腕組みをする。いつもの広がるスカートではなく、足元を邪魔しないショートパンツにレギンス姿、手には使い込んだ絵の具セット。]
さて、とー。
[ドアを開ければ、街は自身の髪と同じ色に染まっている。目を細めてその風を頬に感じながら、手を空に翳せば、紅差指に光る空がその奥のものと溶け合う。]
カーレールー!まだー?!
[扉の中に声を掛ける。返事はあっただろうか。]