[…はカレルとディークに抱えられるだけの葡萄酒のボトルを持たせると、宿に向かう二人を正面の扉から見送った。二人の背中に…は声をかける。]
夕方には私も運んでいきますから、他の皆さんにも声をかけておいていただければ幸いです!
[再び静寂が戻った礼拝堂から居住区のキッチンに戻ると、…は食卓の上の絵葉書>>17に目をやった。そこには王都の宮殿のそばに建つ、…の家族が住む屋敷や荘厳な教皇府の聖堂が、確かに描かれている]
…ディーク殿、お気持ちは確かに受け取りましたよ。貴方の心遣い、それには本当に感謝申し上げます。
然し、これは私自身の問題…。其処にはもう、いや最初から、私の居場所などなかったのです…。
[…は絵葉書に向かって十字を切ると、それをびりびりに引き裂いた。]
私が神に愛されていないことなど、生まれたときから知っていましたよ。
[…は小さくつぶやくと、黙々と地下室から葡萄酒の瓶を運び出す作業に没頭した。]