―何処かの廊下―
ここん温泉に来はるんは……2年? いや、3年振りやったかな。
怪我をしいや以来、やったか。
[見覚えがある廊下を歩きながら、最後に来たのは何時だったか、記憶の糸を手繰り寄せている。
そう、かつてはこの温泉宿に湯治をしに来た事があったのだ。その時は、お見合いなどやってはいなかったが。]
そない言うたら、ケルベロス病院が近かった筈。
機会があれば、あのセンセに挨拶出来やはったらええな。
[思い出しついでに、当時怪我を負った時に世話になった病院の事を思い出し、担当医に挨拶でも出来たら、と思ってみる。
まさか、今、その先生がこのお見合い会場に来ているとは、この時は知る事も無くて。]
今日は、なんやか傷が疼くな。冷えんせいやろうか……。
温泉に入って温まるとしよけ。
[古傷がある左の肩が先程から疼いて痛む。
痛みを誤魔化すつもりで右手で患部を押さえる。
今温泉宿に来ているのだから、温泉にでも入れば痛みが和らぐだろう、と思い、露天風呂へと向かって行くつもりだ。]