− 飛行戦艦 《シュトルツフェア》号 −
[薄明の空を船が渡る。
その船体は、優美な木造船と見えて、その内側に頑健な鋼鉄の隔壁を備えていた。
甲板もまた無垢のデッキだが、いざとなれば、収納式の連装砲が迫り上がる仕組みだ。
天球儀めいた球体を頂く帆柱に、星図を転写した青藍の帆が展開する。
船首像は竜であった。 その口が開けば炎を吐く仕掛けが施されている。
船尾楼を包み込むように側舷から迫り上がる曲線は、天使の翼に似ていた。
羽軸は空洞になっており、スチームエンジンの蒸気が通り抜けるときに、妙なる音色を響かせることができる。
これは、歌う船であった。]