え、ゲルトに?
あいつに任せて大丈夫なのかよ……。
[後のことはゲルトに任せてある>>1、と聞いて、うへぇ、と大げさに息を漏らす。
近くに住む、資産家の青年だ。親の残した遺産で、自由気ままに暮らす楽天家。
男の一人暮らしである。腹が空けばオットーの店でパンを買い、カタリナの牧場で採れた燻製肉やヤコブの農場で採れた野菜を齧り、手料理が恋しくなればレジーナの宿に居座る。
レジーナもまた、そんなゲルトを息子のように可愛がり、溺愛していた。
だからこうして、彼女が出かけるときには留守番を任せたりもするのだが……。
根っからの遊び人である。上手く客の相手など出来るはずもなく、買い置きのパンを肴に酒を振舞って終わるのが常という有様だった。
はあ、とため息が漏れた]