― 過去:一度目の冬の話 ―
[見知らぬ人が店に来た。
その時の自分は、雪と同化しそうな白銀に、見とれていたのだろう。
声をかけられるまでは瞬きすら忘れてその人に視線をやっていた。
普段は旅に出ているこの村出身の青年がもうすぐ戻ってくるらしい、と、
誰かから聞いていたかもしれないが。
その話と目の前の青年が結びつくのはもう少し先の話]
はあ、……外套、の補修を。ですか。
なんなら新しいものを仕立てても構わないですけど。
[受け取って補修すべき場所を確認しつつそんなことを呟いていたが、
どうせそう難しい案件でないと分かれば、
興味と視線を青年そのものに映して微笑む。
営業スマイルが混じっているのは言うまでもない]