………………あいしてる。
[力なく落ちていた腕が、ゆると上がった。
右の手が、自らを抱きこむように左の肩に置かれる。
それはあたかも、今はない手の温もりを追うようにして。]
……兄上”も”。
嫌いになってしまえたなら、楽なのかも知れないけど。
[く。と、息を吐く。
く、く。と、連続で息を吐けば、音なく笑うかの形になった。
背後で大きな音がした。
扉の向こう側で慌ただしい声が響き、失礼しますとの声に続いて兄の死を知らせる者が駆け込んでくる。それを背に聞き、ウェルシュは天井を仰いだ。
立ち尽くす、その背後にもう一つの足音が重なった。
ゾネス陥落を知らせる使者>>5:109だ。]