[それは日も暮れかかった頃だろうか。
背後から聞こえた声に振り返った。
解いたままの金の向こう、随分懐かしい気のする顔を見たのは。>>4:110
俺はといえば、最後に彼女が見ただろう、あの白い軍服に似た服装はなく。
その見目をよく知らないならば、街人に紛れ込んでしまえそうな恰好であっただろう。]
… そうか、
[返すのはたったその言葉のみ。
「あぁ、矢張り死んでしまったのか、
(それが、彼の尚書官長補佐の救いであったのだろうか、)」
…そう思う言葉は音にはならない。
俺が知らなかった別側面の事態を、そのまま彼女が話してくれるのを聞いていた。>>4:111
ゾネス要塞の総督が大軍を率いて王宮に刃を向けた事。
監査局長がそれを止めようと出てきた事。
一触即発の中、総督を撃った白狼騎士団の者がいた事。
それ以外にも話してくれたが、一番把握していなかったのはこの辺りだった。]