[かつて、王都シラーの西広場と呼ばれた高台からは、モンテリー北方山地と、護りの要衝マルサンヌの壁が見晴らせた。
今の西広場から見えるのは、山脈の形さえ損なうほどの大きな傷跡を晒す谷。
攻城兵器の閃光が全てを消し飛ばした後、マルサンヌ周辺には深い瘴気が立ち込めたままだった。
けれど恐怖と共に西の地を眺める余裕のある住人すら、もはやこの街にはいなかった。
疲れ果てた表情の奴隷たちはひしめくように立たされ、広場の中央を見ている。
物々しい監視塔の管理下、広場中央に高く設けられてあるのは奇怪な処刑台だった]