[さっきからずっと子供の泣き声が聞こえる]
[それでも少年は周りを確認する余力はなく]
[このまま力尽きるのだろうと]
チチチ…
[どこからか鳥の鳴き声が聞こえる]
[薄目を開けると薄桃色の鳥を携えた緑の人が立っていた]
[厳冬の世界にはない色を持つ人]
[春の神が来たのかと、思った]
『生きてーか?』
[真っ直ぐこちらを見詰める、杖を付く男性の問いに]
[小さく小さく頷いた、その目元から]
[落ちた滴はそのまま凍り付いた]
[どうして“生きたい”と願ってしまったのか]