[無我夢中の時が過ぎて、ふと気づく。
サシャが持っていたのか寝台の傍にあったのか、
銀の薔薇の一片が肌をうっすら焼いていた。
昼なら何ともないそれは、伝承ほどの効果はないものの服にギリギリ隠れる首もとに淡い薔薇色の痕を残した]
(……俺も、あんたが気に障ってましたよ)
[もしかしたら、軽口として言えたかもしれない言葉を虚しく呟く。
少女は、壁一枚隔てた向こうの従兄に助けを求めただろうか。
その想像は、後ろめたい悦びを与えてくれた。
手が傷つくのも構わず銀線を握りしめれば、薔薇は
毒に触れたように腐食して黒ずんでいく]