[彼女は村にいる間、それが習性なのか、そうしたいと願ってのことかはわからないが、誰からも姿を見られないようにしていた。そうして事実、誰の目にも触れることはなかった。
しばらくして冬が去って行くと、彼女もまるで春を避けるかのように、村から去って行くのだった。一度だけ「引き止めなさいよ」と望まれたために引き止めたが、それでも彼女は去って行った。
とはいえ、一度生まれた共依存の関係がそう簡単に終わるはずもなく、彼女は頻繁に村を訪れるようになっていた。その最中で、どのような状況にあっても生き延びられるような術を多岐に渡って叩き込まれ、果てには一度だけ、村を滅ぼすのを見届けさせられたことさえあっただろうか。とは言っても、彼女は己に手を下させることはなかったし、むしろ「貴方は手を汚さないで頂戴」などと望んだため、本当に見届けただけだった。]