ー第1エリア、通路ー
[標的に定めたクレメンスを死神の”遊び”へ引き込んでから暫し経った頃。
死神に寄生された男の姿は、メイン・サロン手前の通路にあった。]
…………えらくご機嫌だな、クソ野郎
[ドクン、ドクン。
男のものではない、死神の激しい鼓動音が響いてくる。
久々に命を刈り取れるかもしれない状況に興奮しているのか、鼓動音を感じるという事は死神は現在男の心臓部へ居座っているのだろう。
血流をとおして体中を移動して回るこの寄生生物だが、幸いにも脳へ行く事はないらしい。
今の所体の自由を奪われる事はあっても、意識まで乗っ取られた事はないからそう予想しているだけなのだが。
それはそれとして、今考えるべきはこれからの事。
”遊び”が始まってしまった以上、死神に悟られない範囲で自分が死ぬ方向へ誘導出来るように
それと同時に、他の皆の為に人狼や恋天使を探して危険排除の手伝いをするのもいい。
しかしそれは、”遊び”の標的であるクレメンスにバレないようにしなければ。
でなければ、隙が出来ればここにいる人の命を頂戴すると彼に伝えた事と矛盾が出来てしまう。
そこから自身の嘘への疑惑を抱かれては困るのだ、それで殺意や憎しみが薄れて遊びを放棄されたら
……こちらが彼を殺さなければならなくなるから。]