[父の死の際。オルヴァルの戦。父の知り合いであったゲオルグに、頼み込んだ。このまま戦わせてくれ、と。まだ戦いは続いている。父の意志を継ぎたかった。「もっとも医療の必要な場所で医療を」。思えば、二十歳程度の若造が、随分と思い切った願いをしたものだ。医術の腕前も、今と比べれば笑うものだ。従軍する事の許しを得て、安堵のあまり座り込んだのを覚えている。役立たずは軍から去る事を要求されるかと思っていた為に。あとは必死。ただ、必死だった。命を守る力。命を救う力。望むのはそれだけで。]