―昨夜・自室―
[あれから何事もなく仕事が終わり、部屋に戻ってくる。]
――ああ、これだこれだ。
[がさりと棚を探せばやはり残っていた。シモン、ディーターと映っている昔の写真だ。
何となく出して机の上に置く。これを撮ったのはいつだろう。
母と二人でこの村に流れ着いたのはまだ物心ついたばかりの頃だったと記憶している。父は母が言うには随分昔に行方不明になったらしいが、詳しいことは聞かされなかった。
その母も暫くして亡くなり、教会に引き取られ――。
ディーターには一蹴されたものの、一応こんな体でも神の存在自体は真面目に信じているのだった。
あまり人に話したことはないが]
―――ふ。
[ふと窓から外を見上げる。視界に映ったのはどこか寒々しい満月だった。]**