はぁ〜…駄目だ。全然見つからねぇ…何処住んでんだよアイツ…
[友人の家を探すこと早5時間。魔法によって,男のところまで届いたカサンドラの声を聞いたため,その家が相当隠されていることは分かっていたが,村の観光がてら,自力でその家を探そうと思ったのがそもそもの間違いだった。初めは意気揚々と歩みを進めていた男の足は,日頃の運動不足が祟ったのか,強烈な悲鳴を上げている。しかもこの村は深い森の中にあるがために,村の外れに行くほどデコボコとした地形が男の体力を奪っていった。]
うぇ〜…死ぬ。仕方ない,ギブアップだぜ…
[男はそう言うと,右手を高々と挙げ,目を閉じる。瞬間,地面から溢れるように闇が彼を呑み込み,パッと弾ける。しかし,そこには男の姿は無かった。
男が現れたのは村の外れにある洋館前。突如としてボコボコと闇に泡立つ地面から吐き出されるように飛び出して,着地する。男の足が再び地につくと,地面は元通りの草の生えた土に戻った。
男はうーんと背伸びをして,重厚な木の扉の前に立つ。]
…ったく。何つーとこに住んでんだよ。村の奴らに嫌われてるか何なのかは知らんが,もうちっと分かりやすいとこに住めよ。お陰でこっちは,村の地理に誰よりも強くなっちまったじゃねえか!!
[男はそう文句を言いながら,扉を叩く。懐かしい友人に会うために…]