―第2エリア・医務室―
[一応整頓されてはいるが、殺風景な医務室の一角。
ホログラフ化された何かのデータに目を通していた男が、
常の癖で、くしゃりと髪をかき上げれば。
長めの前髪に隠れがちな、光を紡いだような淡い瞳が、
苛立たし気に眇まる]
…ったく、埒があかねぇなー。
[お仕着せのように無造作にひっかけた白衣の下。
着くずした服装ながら、記章を見る者があったなら、
男の正式な身分が船医でないのは知れるだろうが。
この船がネオ・カナンに向けて出発してからは、一応『船医』だ。
正に渡りに船という状況だったのだから、致し方ないとはいえ]