― 回想・霧の海/『蛟』甲板 ―
[それは突然の変化だった。
どこから湧いたか視界を白に塗りこめる霧、それに伴うかのように利かなくなった舵と狂った磁石。
追い討ちをかけるかのように次々と唐突な眠りに落ちる船員達。
声をかけても揺すっても目覚めない彼らをそのままになど出来ず、けれど事態の対処も行わなければいけない]
…それじゃ、先遣を頼む。
ディーもヤクモも、気をつけてな。
何か見つけるまでとは言わん、危険を感じたらすぐ戻ってこいよ。
[原因を探る為に先遣に出る幼馴染とその相棒に常の笑みを向けて見送るのは、不安を感じさせぬよう。
先行き見えない現状に彼らを案じる想いは、艦長代行として表に出す訳にはいかなかった**]