[この上なく、傲慢な押し付けだった。その上「――ああ、そうそう。ついでにこの冬の間、私をここに住まわせて頂戴」などと言うものだからとんでもない。
しかし、己はそのような要求もすべて受け入れた。それは、望まれたからか、はたまた虚ろな中にも動かされる何かがあったのか。少なくとも、己の存在そのものが望まれたことは初めてのことだった。]
[それからしばらくの間、彼女と過ごして気が付いたことがあった。当初こそは、日常の中で息をするかのように要求を向けてくる彼女に対して、依存されたのだと、そう単純に考えていた。
しかし、それは違う。恐らく彼女は当初から気が付いていたのであろうが、彼女と己の関係性を言葉に表すのなら、まさしく“共依存”だった。
彼女の細かい注文も、大雑把な注文も、全て彼女の期待を借りてこなすことで、この上なく満たされていた。一時的かつ借り物であるとはいえ、彼女と過ごしていたときばかりは、己にも“中身”が存在しているのだとさえ錯覚していた。
残酷なほどに願望の渦中へと縛り付けられている彼女と、空っぽな己が互いに依存するようになるまでに、そう時間はかからないのだった。]