― 城館 ―
[木々が導くままに森の中を進んでいく。
公園の中を闊歩するような風情だったが、時折立ち止まっては攻撃を誘い、蔦を引きちぎり枝を折り捨てた痕が点々と後ろに残っていた。
こうして木々を傷つけていても、森の敵意が上昇しているという感じはしない。単に決まった方角へ歩かせたいという意図だけが見える。
先で待っているのは精霊や森霊の類ではないな、との予想を裏付けるように、やがて行く手に石壁が見えてきた。]
さて。
どなたのお召しかな。
[門の前に立って、ステッキで門扉を叩く。
ややあって、誰かが来たとも見えぬまま門が内側へ開かれた。
視界の端で黒い影がちらと動く。]