[―そこまで憎まれていたのか。自分は兄の事を真面目過ぎるきらいはあると思っていても尊敬していた。彼の邪魔にならぬように、何かに熱中する事もせずにふらふらと生きてきた。それならば「兄こそ領主に相応しい」と言われるだろうと思っていたからだ。唖然としたまま、ろくに言葉も交わさずに男は王都へと向かった。以来、一度も実家には帰っていない。あそこはもう、男の‘家’ではないからだ。城ではEsとして存在する事を望まれている。男にとって城での生活は、自由は少なくとも一つの楽園だった。]