[なんで親分さんは、あんな男にひっかかったかなあ、とボヤきたくなる瞬間もあるが、マーティンが人間に喧嘩を売りたい気持ちはわかる。というか、その経緯の一部は一緒に経験した。
モンテリー王国の地下牢で。
もっとも、マーティンはディークと違って無実の罪というわけではないようだったが。]
承りましたよ、っと。
[そんな任務では暴れ足りなそうなマーティンを宥めて受諾の旨を伝える。
意気がってみせて突撃隊でも任されたら、生きて帰れる確率は0に近い。
魔物にしてみれば、どちらを向いていようと人間を殴殺することにたいした違いは感じないのだ。
誇りなどカケラもない役目だが、今のディークの心の温度は冬の朝の灰に等しい。]