― アチコ―村前 ―
[揺れル風ニふわりト揺れル髪ガ、鼻を擽ル。そノ擽ったサに軽ク眉を寄セナがらモ、抱いタ小さナ身体を落ちナイようニ抱え直シ。
何方かト言えバ少なくトモ正の存在デは無い僕ハ、陽の光ハ苦手ダ。だかラ抱えていナイ方の手ニ持つのハ、陽の光を遮ル少シ大きメの日傘。
……可愛らしイ装飾ノ日傘は、決しテ僕ノ好みじゃアなイ。本当はモっと簡素ナ物が良カったのダケれド。
だガこっちノ方が――僕ノ ”女神” にハ似合うだロウ?]
アチコー村……此処が麓ノ村かナ。
……へぇ、温泉なんテあるのカ。
[列車を乗り継ギ、そノ後は徒歩デ。脚の無イ她の、文字通り”脚”とシテ、家かラ此処まデずうっトこの小さナ女孩を腕ニ抱えテ来たわケだガ。
それモ別ニ、苦なんカじゃあナい。こノ死人の躰ハ少なくトモ生前ヨりも力を出しテはくれるシ、何より小さク柔らかイこノ身体を抱けるのハ実ニ役得だ。]