[過去を想い、頬を伝う涙。零れ落ちる雫をもう一人の娘が――リゼットの姉が指先で拭う。戦慄く唇は姉への言葉を口にしかけて、堅く引き結ばれる。たとえ夢の中であっても、赦しを請うことなど出来るものか。幼子のように頑なに首を振るばかりのリゼットに、姉は困ったように微笑みながら頭を撫ぜる。嗚呼――何て、優しい嘘なのだろう。犯してしまった罪でさえ、今だけは、赦されてしまうのだから]