人狼物語−薔薇の下国

549 月下薔薇


木こり イェンス

―サシャの部屋―

[襲撃といえば深夜、が王道だろうが。
 人が想像するだろう時間帯より些か早いのは
 心身ともに疲労した隙を狙うためだった。>>14

 サシャは、鏡の前に立ち手鏡に集中している。
 顔色が悪く見えるのは、今日の事態のせいばかりではないのだろう。華奢な少女は、懸命に鏡の中の真実に手を伸ばしていた。

 ――そこに、不吉な影が実態となって割りいる。

 黒い狼の瞳が紅く輝く。
 生半可な刃物より鋭い爪が、まず振り返った彼女の喉を深々と切り裂いた。

 助けを呼べないよう。
 悲痛な悲鳴を聞かないで済むよう。

 人によっては出血で一瞬で気を失うが、サシャがどうだったかはわからない。つい、続けての追撃の手を止めて変身を解き、抱きしめてしまっていたから]

(21) 2021/08/05(Thu) 23:00:23

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