―サシャの部屋―
[襲撃といえば深夜、が王道だろうが。
人が想像するだろう時間帯より些か早いのは
心身ともに疲労した隙を狙うためだった。>>14
サシャは、鏡の前に立ち手鏡に集中している。
顔色が悪く見えるのは、今日の事態のせいばかりではないのだろう。華奢な少女は、懸命に鏡の中の真実に手を伸ばしていた。
――そこに、不吉な影が実態となって割りいる。
黒い狼の瞳が紅く輝く。
生半可な刃物より鋭い爪が、まず振り返った彼女の喉を深々と切り裂いた。
助けを呼べないよう。
悲痛な悲鳴を聞かないで済むよう。
人によっては出血で一瞬で気を失うが、サシャがどうだったかはわからない。つい、続けての追撃の手を止めて変身を解き、抱きしめてしまっていたから]