―ラバルの館でのこと―
[頬へと放った掌を受け止められ、あまつさえ私の部下の非難とも受け取れかれない反論と耳に落とされた言葉に、出て行く前のアイリは振り向かずに告げただろう。]
・・・私には貴様も含め、
何が真実で何が正しいのかわからんよ。
ただ結果として・・・
街では不穏な噂がすぐに広まっていた。
・・・何もかもが陰謀かもしれんな。
王の死そのものでさえも・・・
[アイリの本心、リヒャルトの発表を嘘とは言わない。
遺言とて直接否定したことはないのだから。]
発表を楽しみにしている。
どちらにせよもうなったことを嘆いても仕方ないのだ。
さよなら・・・
[もし彼が私に対して誰も知らない真実を打ち解けて話してくれたのならば、私は迷うことなくリヒャルトを信じて尚書官も巻き込んだ陰謀説を固められたかもしれない。
もしかしたらその手もとれたかもしれない。しかし後の祭り、アイリは振り返られない。そうしてラバルの館を後にした。*]