……没落貴族の放蕩娘?さあて、私は確かにディルドレだが。吟遊詩人のただのディルドレさ。人違いじゃないかい御老人。ふむ、私も名が落ちたもんだ。そうだねぇ……その娘のことは知らないが、こんな物語なら知ってるよ。[ふたたびリュートを爪弾いて、少し掠れたアルトが紡いでゆくのは旅する娘の冒険譚。暁の国・ラメールで没落貴族の放蕩娘と噂されたのは遥か昔。自由を求め家を捨て、今では吟遊詩人として大陸中に名を馳せていた。**]