[曇った窓を服の袖で拭いて外を覗き込めば、目に一面の白が飛び込んでくる。生まれたときから住んでいる村の、見慣れた――否、見慣れすぎた冬の光景。]店の前の雪かきは済ませたし、掃除もばっちり。[指を折って、自分がすべき仕事を確認する。幼い頃から厳しく仕込まれているから、手順は既に体に刻み込まれている。今朝一番の客は誰だろうなと考えながら、林檎のすりおろしを入れた甘い香りのするアプフェルブロートの前に、”本日のおすすめ”と書いたメモを置いた。]