[風船のようにあわあわと、逃げようと空を引っ掻く白猫から、説明書の在り処を強請り取れば。>>18
未使用の装置の一つに駆け寄って、銀の羊に指で触れる。
Sleeping Silver Sheep?
この状況で冗談としか思えない、“安らかな眠りのシンボル”に眉根を寄せるも、それでもこの装置は、救うための一時の命綱にもなるはずだ。
目の前に浮かび上がる体感式ホログラフは、実物そのものの質感を供えて感じられる、冷凍睡眠装置のミニチュアだったか。
順を追って動くそれを、確かめながら操作を進めれば、素人である青年にも程なく準備を終えることは出来ただろう。
その段になって、はじめて。
恨みがましそうな、あるいは単に痛そうな目で、Nルームの隅っこでしっぽを舐める猫のホログラフがいたとしたら]
……すまん、つい。
[片手を挙げて、謝罪しただろう。]