― クラタエグス砦 ―
ふうん、暁紅の騎竜師殿の部隊てのは、結構めんどくさい立場なんだな。
[ 捕虜となって数日。最初のうちは、警戒心も露に必要最小限の会話しか交わさなかった見張りの兵士と、彼は、すっかり世間話をする間柄になっていた。
きっかけは、彼がカードゲームで負けないコツを伝授してやったことだったが、どうやら、普段から上司の無茶振りにストレスを溜め込んでいるらしく、愚痴を聞いてくれるなら誰でもいいような心境でもあったらしい ]
今も最前線に置かれっぱなしなんだろ?
…やっぱりこの霧じゃ、大変だよなあ、どっちの軍も。
俺は、捕虜になっといて、楽できたかもな。
[ 笑顔で言った台詞には、さすがに懐疑的な視線を向けられたが、元より気にはしなかった ]