[立ち上がり、血が落ちている事を確認する。
服についた赤は遠目なら分かるまい。
今は聴覚も敏くなっているから、
気配を避けて楽に自室まで戻る事ができるだろう。]
ねぇ、私の騎士様。
ひとつだけ言うことを聞いてくれるかしら。
[“私”の信頼を私に返してくれようとする優しい騎士へ
昼間と変わらない笑みを向ける。]
私のことを守らないで。
[サシャがどうして死んだのか薄々予測はついている。
ドロシーもそれなりの官位にいて、聞けば答えてくれる人もいた。
カスパルの行動の意味も理由も理解しているが、それは不要だ。
彼は反発しただろうか。
それとも静かに頷いただろうか。]
それから、もうひとつ。
……カスパルは生きていたい?
[その真意は伏せたまま尋ねる。
反応がどうであれ、引きとめられない限りは
夜が明ける前に自室へ戻るために部屋を辞去する事だろう。*]