―回想・約十年前B― [願いや理想を持つことは、人が生きる上で非常に大切なことである。しかし、通常、願いや理想の、特に抱ける数量には限度がある。それが強ければ強いほど尚更だ。 願いを叶えてしまった人間が突然脱力感に苛まれることなどはよくある話で、一つの強い願いを叶えて、即座に次の願いへと意識が向くということは、基本的には存在しない。少なくとも、無限に、生存欲にも匹敵する願いを持ち続ける人間などは聞いたことがない。