[お互いの立場を表すように、背を向けて歩き出す気配が遠のく。跳躍し、茨を破壊しながら駆けて行った背中が見えなくなった頃、ようやく深い息を吐き、前髪を掻き上げた。] 全く、面倒なことになりましたねぇ。[久々に殺意に当てられ、昔を思い出した指先が僅かに震える。野茨公の庇護の元にあったここ数年、平和な時を過ごしたツケが回ってきたとでも言うのだろうか。じわりと浮かんだ汗を拭い、2Fの浴室へ向かおうと、ゆっくりと歩を進め始めた。地面に落ちた血の跡からは、淡い小さな花が咲き誇っている。]