― 野茨城 ―[夜に溶ける黒馬の脚は、御者に命じられずとも、白薔薇の彩る門の前で静かに止まった。訪問の前触れを済ませ、一足先に城内に荷を運び入れて戻ってきた御者へと、女は笑みを向け] じゃあ、行ってくるわ。 お父様がもし、早々に迎えに来るよう仰っても――…、 そうね、経験則上、二回は引き延ばせると思うの。 今日は許可付きの外出ですもの。 ……期待してるわね?[貴女のお手並みに、と甘やかに命じる]