[帝国が”水路”と呼び習わす先には、水雷母艦と水上機母艦が配されている。が、これらは戦艦に対するだけの力を持たず、ゆえに各艇並びに複葉機による迎撃──幾分の足止めののち、速やかに退避することが認められていた。
その先、”水路”出口付近には巡洋艦二隻が機雷を配し構えている>>5:122
いわば機雷による袋小路を意図した形で、最終的にはその”小路”にて帝国艦隊を捕捉・停止させたい考えであった。無論、穴はある。母艦が退避可能なのだ、少しの時間をかければ帝国艦隊とて抜けられるだろう。けれど、それも承知でそのようにした。
ゲオルグは元より、艦を以って帝国艦隊の突撃を止められるとは、あまり考えていない。いや、可能ではあろう。可能ではあろうが、それは、艦と人とを鉄と血の壁とするべき策だった。
それをゲオルグは、良しとしなかった。
臆病者と、副官相手に自身を笑う所以である。]