[音色を聴いて、歌う声を聴いて。その瞬間、自分の内側に、何かが響いたような気がした。それが、『始祖』の気配に共鳴した目覚めぬ『新種』の血のざわめきとは知らぬまま。その音色を己が内に取り込むも、祖母の願い──他の人に教えてはだめ、というそれに従い、外で奏でる事はなく。祖母が亡くなった後もその戒めは守り通した。祖母の形見とも言うべきそれは、いつか、思うように音色を紡げなくなった『シルヴィオ』の心の拠り所となっていて。それは、『シルヴィオ』の名を捨てた後も変わる事はなかった]