……、はっ……げほっ[手が緩んだ隙を逃さず、ヴェルナーの腕から逃れた。げほげほと咳き込み、口端を伝う涎を拭い、睨みつける] ……ちぇ、上手く潜り込んだと思ったのになァ。 ねえ、タチアナ? あの時、何の疑問も持たずに僕に庇われていたけれど、うまく化けていたと思わない? ……ほんと、君って単純。 この体の『記憶』にあるとおりだ。 尤も、本物の方は、そうやって真っ直ぐ自分の意思をぶつけられる君の姿を、羨ましくも好ましく思っていたようだけどね。