[>>1聖女と向き合う淑女が半面を青年の方に向ける。
美しい唇は鮮やかな血に彩られており、言葉をなくした。]
……な…、
[“普通の淑女”であるならば、卒倒して然るべき場面。
命を撒いたような血液はその主の命が無くなっていても可笑しくない事を示していた。
けれど彼女の黒いドレスの裾は汚れ一つ見当たらない。
違和感を伴うその光景は、奇跡でないのであれば魔性の力なのだろう。
人間を美味なる者と言った彼女は捕食者たるを隠しもしない。
淑女に向けるのは眇めた薄花色。]
汚れでなければ、穢れだろう。
愛しているのであれば、何故命を摘む?
腹が減ったら喰らうだけの獣と何が違う。
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