[男は吹雪で近づけぬ宿をじっと眺めていた
愛する子に、生き残ってほしいと願っていた
だが。確かに男の願い通り、子は生き残った
但し、誠実な”人”であることを――捨ててしまった]
『生きているうちに愛していると
伝えていればよかったのか
ああ、ジル、ジル。すまない――すまない』
[男はかつての同胞が、息子と息子が依存した男に
憎しみを孕んで眺めているのを見ながら
心から幸せそうに、全てを滅ぼした男の隣で笑む息子を見ながら
唯、唯慟哭する。それは息子が嘗て
兄のように慕った守護の力を持つ男の遺体の前で
慟哭したのと同じように、悲嘆を背負っていた*]