[夢のことは殆ど覚えてはいない。
ただ、彼女は泣いていた気がする。酷く苦しそうに、泣いていた気がする]
―――――…?
[柔らかな囁きで、ぼんやりと覚醒した。
見慣れた天井。自分の部屋だ。声を発した愛しい人は、隣で静かに微笑みを浮かべている]
オクタヴィア。
[どうして此処に居るのか、とか、そう言ったことよりもまず先に。その存在を確かめたくて、身体を起こし腕を伸ばす。指先に触れる彼女の頬の体温は、それが幻ではないことを告げていた。
…当たり前だ。彼女は男の行動を、奇異に思っただろうか。
冷えた空気の中、差し込む日差しが暖かい。昨日までの漠然とした不安は何故か雪のように溶け去り、代わりに心に鈍い痛みを残していた]
ヴィオ。
[彼女の顔をじっと見つめたまま、思考するより先に言葉が口をついて出た]