― ユーリエの私室>>17 ―
[「魂に過負担が起きる」と言われれば一瞬躊躇したが、世捨て人も同然のような生活を送っていたニコラスは意を決した。]
わかりました、覚悟します。
[もう戻れない――。
しかし、これからの人生が輝いて見え、始まるめくるめく倒錯の世界への期待でいっぱいだったニコラスの瞳はまるで少年のようだった。
旅をし、見知らぬ地、見知らぬ人との出会いを重ねていたのは、深層心理の中に変身願望があったのかもしれない。
(女装したのもそれの現れだろうか。)
生まれ変わるような感覚に昂奮していた。]
溶岩…いえ、せめて溶岩温泉とか岩盤浴くらいにしてください…。
寒いところも…生きられる程度の寒さでお願いします。
[笑顔で言うユーリエに青ざめながら、そんな命へのギリギリのやり取りを思うと『生きている』実感をしなくもなかった。
ニコラスは跪くと、ユーリエの足先に恭しくキスをした。*]