― 封印の間 ―
[転移した先で、最初に感じるのは、激しい熱波。
次いで、何者かが激しく吼える声]
……っ!
やっぱり、大人しくしてねぇか!
[中央に祭壇を配した石造りの間。
祭壇の上には、くすんだ緋色の獣の姿がある。
炎思わせる尾を持つ巨大な狼──その四肢には、鎖のようなものが絡みついている。
祭壇の四隅には同じ鎖とわかるものが打ち込まれており、獣が鎖を引き千切って動いていることは明白だった]
とはいえ、あれならまだ、間に合うか。
封を修復すれば……。
[言いかけた言葉を遮るように、咆哮が響く。
咆哮と共に空間に焔が弾け、それは雨のように降り注いだ後、緋色の獣を形作った]