わたしはフェリクス殿下が、王位継承者に選ばれるものだと思っておりました。
なので、にわかに文書の内容が信じられなかったのです。
文書が偽物かもしれない、と思ってしまったのは、恐れながらフェリクス殿下が選ばれて欲しかった、と暗に願っていたからかもしれません。
[わたしは一度言葉を区切り、心痛を負ったような顔をして続ける]
……フェリクス殿下のお人柄や才覚は、軍に居れば誰もが知れるところ。
一方、ウェルシュ殿下については、先程フィオン様から伺うまで、ほどんど知らなかったのですから。
[実際にフェリクス王子が選ばれると思っていたから、嘘は言っていないはずだ。
それに、文書の真偽を問う部分はともかく、考えのほとんどはアイリ総督に沿っているだろう]
信じられなくて、思わずあのような事をつい口走ってしまいました。
……その結果、同調する者が次々と現れて、あのような騒ぎに発展した次第です。
[申し訳ありませんでした、とわたしはもう一度頭を下げた。*]