[しかし、その願いが叶うことは終ぞなかった。…が5歳の時、両親が死んだ。正確に言うと、両親の遺体が森から発見された。当時の…でもわかるくらいに、両親は衰弱していた。餓死だった。]
[父の持っていた鞄に、メモ帳が入っていた。「森に呼ばれたので、明晩、妻と二人で森に入る」から始まるそれは、森の中での彼の日記のようだった。]
[「コンパスが狂ったようだ」「此処は何処だ」「何者かの声がする」「日が昇らない」「村は何処だ」「食糧が尽きた」「ジークに会いたい」、そんな言葉が綴られていた。そして最後のページには、死期を悟っただろう父の、筆圧の薄く歪んだ、そしてどこか力強い言葉が書かれていた。]
[「ジーク、研究を頼む」と。]