[クリーク砦陥落――すなわち、
『独立回復派起つ』との一報が齎され、
ざわめきが漣のように街中を駆け抜けた夜。
エドルファスは、深色の外套に身を隠して州都を発った。
西に東に行き交う軍靴の音を背に聞きながら、北を目指す。
独立回復派が先んじて北を制圧する方針は聞き及んでいた。マーチェス平原近郊に居を構える
近々決起を行う動きアリとの一報を受け取っていたためだ。
同胞からの文は、その場で暖炉で燃して灰にした。
そしてすぐさま参戦の意を遊牧民の間に伝わる童べ謡に隠して示し、伝書屋に返信を届けさせてはいるが、無事に「彼」の元へ到着しているだろうか。]