[この隠れ場所で、初めて少女と会った時も、女は何処かしらに痣を作っていた。
───隠さなきゃ……
そう思うも言い訳は幼い女の口から上手く出るはずもなく、口籠り、困ったように笑うことすら出来なかった。
そんな女に何も聞かずに、少女は痣に薬の葉を貼った。
季節は巡っても、女が此処で小さな空に空想を浮かべることも、薬草を取りに来る少女がそれを見かけるのも変わらないままに、ただ、2人の年齢だけが一つまた一つと増えてゆくだけ。
頬を腫らしていても、腕にキズが有ろうとも、少女は何も聞かずに薬を塗ってくれる。
身体の痣の理由も、此処に逃げ込む理由も、誰にも知られたくなかった女は、その優しさに甘えた。
そして、その優しさだけではなく、現実に少女の処方する薬は良く効いた。
困れば村のみんなが少女の家に駆け込むのが分かる。
この霊薬師の一家が、隣町までが遠く、交通も充分に発達しない村の生命線の一つであるのは疑いようもなかった。]