お前ガ失っタものハ、すべて、おれが、
[腕の形を成す緋色の稲妻が、胸に空いた己の穴から何かを握り込む。
その拳が青年の胸に沈み込み、その奥にある臓器に触れた。手の内に在ったもの分け与えるように撫でやって。
再び引き抜かれた時には、青年の胸の傷と男の左腕は、跡形も無く消えていた。]
折れてしまう花でも、いいんだ。
負けたって構わない。
[摩り切れ汚れた尾で慈しむように青年を包み、抱き寄せたその顔を覗き込む。
綺麗な銀の髪が額や頬に貼り付いて、けれど支える腕しかない己にはそれを払ってやる事も出来ないけど。
起きて。
顔を寄せる。もう一度小さく呼んで、その鼻先をいつか貰った『不意打ち』と同じように、そっと舐めた。*]