[そわそわと、書斎で行ったり来たりを繰り返していると、
郵便屋の声掛けが遠く聞こえ、思わず部屋を飛び出した。]
……っと
[召使が不思議そうな眼差しを向けるので、
少々気恥ずかしく、立ち止まり、こほんとわざとらしい咳払い。]
……その、私宛の手紙は、来ているだろうか?
[数通の封書を手にした召使は微笑んで、それらを手渡す。
緊張の面持ちで、差出人の名を見つめ]
―――、あった。
[もしかしたら愛想を尽かされてしまったかと
そんな不安まであったのだ。
婚約者の名を軽く指先でなぞり、
その後は書斎に引きこもることにした。]