― 回想/資料室の漆黒の中 ―
[全てが終わり、赤い小池が生まれた以外には、最初に入って来た時と何ら変わりはないはずなのに
展望ラウンジから見える景色のように、暗く、昏い闇色の帳が下りた>>2:395データ資料室には、
最初に感じた静けさ>>2:348のような澄んだ静けさはなく、混沌とした沈黙>>1が満たされていた。
漆黒の中にいながらも、自らの肩にかかる伸ばされた細い腕>>2:394が、朱の斑模様に染められていたのをはっきりと目で捕える事が出来たのは、
己の瞳が、人間のそれとは異なるものだったからだ。
彼女の腕を取り、血で汚れた指先に触れながら]
……さようなら。
[腕の持ち主である、血溜まりの中で息絶えた女性>>2:395の最期の挨拶に、一言だけ、そう応えた。*]