― 数日前 ―
[扶翼官殿を乗せて複葉機は空を駆ける。
慣れた空も乗せている相手が相手だけに少々緊張が緩んでいるのはここだけの話。]
さっさと帰れるかどうかは扶翼官殿の手腕次第でしょうに。
[掛けられる言葉も、返す言葉も軽い。
それは小鴉を介して繋がりが深いせいだ。
それでも名前を呼ばず、階級で呼ぶのは彼が小鴉の一員ではないから。
小鴉内では階級も関係ない。
例え陛下であろうともくだけた口調に呼び名ではあるのだが。
彼は違うから。]
いざとなれば命に代えてもお守りいたしますよ。
[懐の短剣に賭けて彼の命は護ってみせる。
それが陛下の願いでもあるだろうから。]